研究所の使命

所長

所長 大川 恭行
Director Yasuyuki Ohkawa

2024年4月8日

生体防御医学研究所は、生体の恒常性を維持するために重要な「生体防御」を研究の中心に据え、その制御機構を分子、細胞、個体のレベルで明らかにするとともに、生体防御機構の破綻による疾患の克服を目指した研究を展開しています。これまでにも、生命現象の本質や疾患発症のメカニズムに迫る多くの優れた成果を発信し、国際的にも高い評価を受けて参りました。さらに現在、バイオロジーとテクノロジーの連携をより一層強化することで、多角的に生体防御システムを解明できる世界的な研究教育拠点を目指して活動しています。

本研究所は、1982年4月に九州大学温泉治療学研究所(大分県別府市)と医学部附属癌研究施設(病院地区)の統合、改組により発足しました。2001年4月には、遺伝情報実験施設を統合して大幅な再編を行い、3研究部門(ゲノム機能制御学部門、細胞機能制御学部門、個体機能制御学部門:計12分野)、2附属施設(遺伝情報実験センター、感染防御研究センター:計8分野)の構成となりました。その後、2009年4月に感染ネットワーク研究センターを設置し、2010年4月に感染防御研究センターを生体多階層システム研究センターに改組しました。2018年4月には、附属施設の「生体多階層システム研究センター」と「感染ネットワーク研究センター」を統合再編して、「システム免疫学統合研究センター」を設置しました。

また、2010年度に文部科学省から共同利用・共同研究拠点「多階層生体防御システム研究拠点」として認定されて以来、 国内外の多くの研究者と共同研究を実施し、技術や設備の供与を通じて、研究者コミュニティーに貢献して参りました。 2022年4月からは、第3期の共同利用・共同研究拠点「多階層生体防御システム研究拠点」の認定更新を受けております。 最先端の研究機器や支援技術(超高速DNAシーケンサー、電子顕微鏡、プロテオーム・メタボローム解析、遺伝子改変動物作製サービスなど)を国内外の多くの共同研究者に開放・提供しております。特に近年はオミクス開発にも注力して参りました。 2013年4月に、「遺伝情報実験センター」の改組・拡充により設置された「トランスオミクス医学研究センター」を拠点として、オミクス開発やデータ取得が行われました。特に核酸オミクスの展開は目覚ましく、 2022年の高深度オミクス医学研究拠点整備事業の採択に伴い、「トランスオミクス医学研究センター」を改組し、「高深度オミクスサイエンスセンター」を設置し、空間オミクス、マルチオミクスの開発とともに、これら最先端の技術を取り入れた先駆的な医学生物学研究を推進する4分野を新設しました。このセンターでは、国内の3つの共同利用・共同研究拠点(東京医科歯科大学難治疾患研究所「難治疾患共同研究拠点」、徳島大学先端酵素学研究所「酵素学研究拠点」、熊本大学発生医学研究所「発生医学の共同研究拠点」)と連携して、社会的ニーズの高い感染症、アレルギー、がん等の疾患発症のメカニズム解明に向けて、時間軸や空間軸に沿って、高精度・高分解能のビッグデータを収集・統合し、得られたデータを標準化・モデル化につなげて恒常的に世界へ発信します。2023年度からは共同利用・共同研究システム形成事業「学際領域展開ハブ形成プログラム」に採択され、高深度オミクスサイエンスセンターで開発された技術を発生・再生分野における研究に活用する新たな試みとして4Dシステム発生・再生学イニシアティブ事業を開始しました。本事業では、学内の異分野連携拠点である九州大学汎オミクス計測・計算科学センターに加えて、熊本大学発生医学研究所、京都大学医生物学研究所と連携し、数理学的手法を用いた器官形成の全貌解明を目指しています。

大学院教育においては、本研究所は医学系学府(医科学専攻修士課程、医学専攻博士課程)とシステム生命科学府(生命医科学専攻5年一貫制博士課程)の教育と研究指導を担当し、理医連携のコアとして活動しています。2024年からは医学系学府とシステム生命科学府医学府の双方の教育活動を協力する制度の運用も始まります。

本研究所の研究を支える共同実験施設もまた新たな役割を担うため時代の要望に応じた柔軟な改組を行っています。発生工学実験室と技術室を研究推進ユニットとして統合し、支援活動を一本化しました。更に、2023年にビッグデータや情報セキュリティに対応するため情報解析基盤室を設置しました。更に2024年度より、先端研究開発室が設置され若手研究者の独立的な活動を支援するとともに、教員のリカレント教育を推進するインキュベーター機能を担うこととなりました。産学連携活動として、2023年からは共同研究部門として、高深度オミクス解析部門、ネットワークAI統計解析部門の2分野を設置し積極的な企業連携を始めています。

この様に、本研究所は2024年に新たな体制で、生体防御医学研究を推進して参ります。今後とも活発な研究活動により、生命現象ならびに疾患発症のメカニズムを解明し、新たな医療イノベーションの創出へ貢献することが、生体防御医学研究所教員・学生・スタッフ一同の願いです。何卒、ご支援賜りますよう心よりお願い申し上げます。