教育に関するポリシー

私は、真剣に世界一素晴らしい大学院教育を目指しています。大袈裟に聞こえるかも知れませんが、本人はいたって真面目です。

知識だけでは科学はできません。しかし知識なしでも科学はできません。科学は論理であり、“無”から創造するものではなく、“有”から組み立てるものです(ひらめき、とは組み立てる過程のちょっとしたアイデアのことを言います)。その組み立てるパーツになるものが知識であり(=学ぶこと)、組み立て方が論理です(=考えること)。両方が必要なことは孔子の時代からわかっていた真理です。

学而不思則罔。思而不学則殆。

「学んで考えなければ、すなわち愚かである。考えて学ばなければすなわち危険である」。つまり勉強ばかりしても思考しなければ阿呆であり、思考しても知識がなければ何にもならない、ということです。

多くの大学院生は、当初「考える」ということができません。皆さんは「そんな!」と思うでしょう?「考えることなんか毎日毎時やっているさ」と思うでしょう?でも、実は多くの人は、論理を立てて思考することについて、全く訓練ができていないのです。思考とは、必要条件と十分条件、場合分け、ヒエラルキー、仮定や背理、逆・裏・対偶などさまざまな論理を駆使して、物事を考えることを言います。科学者にとっては必須の頭脳テクニックですが、残念なことに、この思考訓練の重要性に気付いている人間はほとんどいません。

では、中山研での教育について、そのポリシーからご紹介しましょう。

私の教育ポリシーは、釣った魚を与えるのではなく、自分で魚を釣る術を教える、というものです。他のラボを見ていると、指導者が私より親切なためか、学生のために魚を釣ってあげている光景をよく目にします。それで一流雑誌に論文が載ったりすることもあります。しかし、それは長い目で見れば、学生をダメにしていることは明白です。そういう学生にちょっとひねった質問をすると、たちまちしどろもどろになります。

私のラボでは、大学院卒業時には、一人で魚が釣れるようにして、世界へ送り出します。つまり、博士課程修了時には、一人前の科学者として、研究の企画・立案・実行・発表が一人でできるだけでなく、卓越したプレゼンテーション能力を兼ね備え、世界中のどこのラボに出しても恥ずかしくない人材にします。

私が推薦して卒業生を送ったアメリカのラボでは、彼らは着いたその日からいきなりスターポスドクです。留学先のボスから私に「とても良い人材を送ってくれて大変感謝している」という内容のメールを貰うことは、私にとって別に驚きでも何でもありません。もともと頭が良くて勤勉な日本人に、4年間みっちり科学的トレーニングをして送り出すのですから、他国の研究者に引けをとるわけがありません。

教育は、強制から始まります。そういうとびっくりする人がいるかも知れませんが、これは私が10年間の教育経験から得た真理の一つです。小学生に漢字を教えたり、九九を教えたりするとき、彼らの「意志」とか「やる気」等は関係ありません。

この点に関しては、残念ながら大学院生といえども同じです。どんな優れた人でも、初めは背中を押してやらないと、なかなか前へ進めません。私のラボでは、セミナーや学会で質問する、ミーティングで積極的にディスカッションする、等は「must」です。私がある程度強制してあげないと、学生さんはなかなか積極的に発言できるようにはなりません。

しかし、ある程度の時間が経つと、うちの学生は背中を押さなくても、どんどん前へ歩いていくようになります。今、これを読んで「エッ」と思った貴方も、きっとできるようになります

真剣に科学をやる、喜んで質問する、楽しんでディスカッションする。これが中山研の姿です。どこかで中山研の学生を見かけたら、よく観察して下さい。一味も二味も違うはずです。

メール: 
電 話: 092-642-6815 中山 敬一 まで

九州大学 生体防御医学研究所
分子医科学分野
教授 中山 敬一