第742回 生医研セミナー(多階層生体防御システム研究拠点)


下記の通り、吉村 昭彦 先生によるセミナーを開催致します。皆様方のご参加を心よりお待ちしております。

演題

『脳梗塞後の炎症の促進と収束のメカニズム』
Mechanism of promotion and resolution of inflammation after stroke

演者

吉村 昭彦 先生
慶應義塾大学医学部 微生物学免疫学教室・教授

日時

2017年5月26日(金)  17:00~18:30

場所

生体防御医学研究所 本館1階 会議室
以下の地図の24番です。
(https://www.kyushu-u.ac.jp/f/28545/hospital_jp.pdf)

要 旨

脳梗塞などの組織破壊が起こると壊死に陥った組織の中に血液由来の免疫細胞(マクロファージや好中球、さらにリンパ球)が多数浸潤し、炎症が起きる。我々は脳梗塞後の炎症と梗塞領域の拡大に浸潤マクロファージから放出されるIL-23 やIL-1βとそれによって誘導されるγδT細胞由来のIL-17が重要な役割を果たしていることを報告した (Nature Med. 2009 15: 946、Nature Commun. 2015, 6: 7360)。さらに我々は炎症性サイトカインの産生を誘導する脳内TLRリガンド,すなわちDAMPs(Damage-associated molecular patterns)としてペルオキシレドキシン(Prx)ファミリー分子を同定した(Nature Med. 2012, 18: 911)。
一方で梗塞発症3日目以降になるとPrxやHMGB1などのDAMPsはマクロファージに内に取り込まれて分解される。DAMPs受容体遺伝子のクローニングを試み、スカベンジャー受容体Msr1を同定した。またこの受容体遺伝子の転写を促進する重要な転写因子としてMafbをした。梗塞後3日以降はマクロファージが炎症性から修復性に変化してDAMPsを処理することで炎症を収束させることがわかった(Nature Med. 2017 in press)。脳梗塞の炎症は1週間もすると消失すると考えられている。しかし我々は梗塞2週間後の慢性期にはさらにT細胞が大量に浸潤しアストロサイトの活性化を制御していることを見出した。慢性期には一見炎症は顕著でないものの脳細胞と免疫細胞が相互作用して動的平衡状態にあることが示唆された(未発表)。

連絡先

生体防御医学研究所 感染制御学分野
吉開 泰信 092(642)6972