第719回 生医研セミナー(多階層生体防御システム研究拠点)

下記の通り、清水先生によるセミナーを開催致します。

清水先生は、これまで脂質生化学分野を代表する世界的に独創的な研究を推進されてきています。特に「生理活性脂質と膜リン脂質代謝」の解明に大きく貢献され、国際的にも非常に高く評価されておいでです。また、本領域研究の面白さに加えてグローバルな若手人材育成への熱き思いなども、意見交換等も含めて語って頂きます。

多くの方々のご来聴をお待ちしております。

演題

生理活性脂質から、膜脂質へ

演者

清水 孝雄 先生
国立国際医療研究センター 理事、脂質シグナリングプロジェクト長

日時

2016年 7月 7日(木) 15:30~17:30

場所

病院キャンパス内 総合研究棟1階 105
以下の地図の1番です。
(https://www.kyushu-u.ac.jp/f/27234/hospital_jp.pdf)

要旨

生体膜はグリセロリン脂質などの両親媒性分子を主成分として、二重膜という隔壁構造を形成している。グリセロリン脂質は少なくとも6種類の極性基を持ち、二つのアシル鎖(脂肪酸鎖)を持つ多様な構造で、組み合わせで、1000種類を超えていると考えられる。この多様性がどの様に形成されるのか、また、その生物的意義は何か、単なる隔壁以上の機能を持つことが想定されている。演者らは、2003年、膜リン脂質多様性の形成機構の研究を開始した。また、同年、ゲノム、プロテオームに引き続き、脂質などの代謝物を網羅的に定量ないし、プロファイリングする技術の開発を目指して、日本で最初の「メタボローム講座」を東大に設立した。その後の研究により、膜リン脂質のアシル鎖の多様性を形成する分子群(アシル転位酵素)を数多く単離し、ケネディ経路、ランズ回路の様々な酵素が個々の脂肪酸種の蓄積に関与することを見出した。これは従来の学説とは異なるものであった。さらに関連する分子を欠損したマウスや細胞の解析から、多様性を持つ生物的意義、また、ホメオスターシスの破綻としての疾患の概念を解明しつつある。演者の30年以上にわたる研究生活を振り返り、現在の研究の意義や面白さを概説したい。

<参考文献>

  • Shimizu, T. Lipid mediators in health and disease. Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 49:123-150, 2009
  • Harayama, T. et al. Lysophospholipid acyltransferases mediate phosphatidylcholine diversification to achieve physical properties required in vivo. Cell Metabolism 20;295-305, 2014
  • Hashidate-Yoshida, T. et al. Fatty acid remodeling by LPCAT3 enriches arachidonate in phospholipid membrane and regulated triglyceride transport. eLife 2015; 4:e06328, 2015

連絡先

生体防御医学研究所 オルガネラホメオスタシス研究室
藤木 幸夫 092-642-4232 (秘書 6341)