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☆教授室


  教授室 〜吉開日記〜

  教授が研究生活の中で思ったこと、考えたこと・・・。
  若い科学者へのメッセージもあれば、ただの独り言もありますが、時間がある方はどうぞ吉開WORLDにおつきあいください。
  御意見、御感想、御質問はyoshikai@bioreg.kyushu-u.ac.jpまでお願いいたします。

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情報の非対称性 (平成16年2月14日)
 本日、財団法人ヒューマンサイエンス新興財団 ヒトゲノム・再生医療等研究推進事業先端医学研究等普及啓発セミナーに教室員とともに参加してきました。野本亀久雄名誉教授が座長です。野本先生はフェアー、ベスト、オープンを基本軸とした臓器移植ネットワークでの運営指導力を請われてヒューマンサイエンス財団「組織バンク」の倫理審査委員長に就任されています。バイオインダストリーを日本の基幹産業に育成するためにもっともむずかしい役目を引き受けになったようです。余人をもって替えがたしですね。セミナーを聞いていますと、研究者と国民との情報量の差、すなわち非対称性が問題であることを指摘されていました。先端医療研究をになう研究者が、マスメデイアを介して、国民に正確な情報を提供することによって両者の情報量に非対称性のギャップを埋める必要性を強調されていました。私もこのホームページで研究成果を日本語で公開していくことにします。


代替医療と免疫 (平成15年12月6日)
 第33回日本免疫学会総会・学術集会のサテライトシンポジウムとして平成15年12月6日 (土曜日) 15:00−16:30に高校生のための免疫学-ここまで進んだ病気と戦う免疫学研究-が開催されました。パンフレット作り、各高校巡りから会場の設置まで感染制御学分野の全員で準備しました。高校生の参加者は約80名にのぼり、NHKからも取材がきましてまずは盛況だったと思います。35年前の高校生のときには「免疫学なんて生物なので大学入試には関係ないや」と考えていた私にとって、今の高校生は免疫学をどのように捉えているのだろうかと興味がありました。ある高校生から「親戚が癌でなおらないといわれ、外国からトランスファーファクターを個人輸入して飲ませているが、免疫学者からみてどうおもうか」との質問ありました。トランスファーファクターは初乳に含まれる免疫活性物質ですが、その活性成分は不明で最近、とんと免疫学分野の論文ではみかけません。この質問は衝撃でした。免疫学は著しい進歩をとげている生命科学の根幹をなす学問分野であると自負していますが、この質問はその免疫学が医療の現場にどれほど還元できているのかという疑問を投げ付けたとも受け取れます。トランスファーファクターをはじめアガリスク等の健康食品は代替医療と呼ばれています。日本補完代替医療学会よれば代替医療とは現代西洋医学領域において、科学的未検証および臨床未応用の医学・医療体系の総称だそうです。健康食品以外には、中国医学(中薬療法、鍼灸、指圧、気功)、インド医学、免疫療法(リンパ球療法など)ハーブ療法、アロマセラピー、ビタミン療法、食事療法、精神・心理療法、温泉療法、酸素療法、等々すべてが代替医療に入ります。まだ免疫療法は科学的未検証および臨床未応用の医学・医療体系にはいることになります。しかし、免疫療法はいまや、抗体療法による慢性関節リュウマチの治療や樹状細胞や遺伝子によるがん治療法などが医療の現場に応用されるようになってきました。予防医療としての健康食品も日進月歩で進歩する免疫学の知識でその機序が語られるべき時期にきていると思います。


When science meets religion (平成15年11月1日)
 大学院を卒業した頃をscientistの端くれと呼ばせていただくならば、scientistとなって20年になります。わたしのような凡人でもたこ壷と呼ばれる大学で一つのことを勉強してますと、scienceとreligionが良く似ていることがわかってきます。Scienceの目的はもちろん真理の探究でありますが、religionもめざすところ、真理(宇宙の秩序をきめているもの)の探究であり、真理を擬人化したものが神様と考えられるでしょう。Religionの種類によってそれぞれ神様も異なり、その探究方法もちがいますが、到達目標はみな同じところと理解するようになりました。  いままでで指導教官として体得したことは『世のなか正直』でした。真面目に取り組む大学院生はいい仕事が出ましたし、それなりの大学院生はそれなりの業績でした。聖書にも『Ask, and you will receive, seek and you will find, knock, and the door will be opened to go』とあります。しかし、一生懸命取り組んでいる大学院生でもよい業績をのこせない時は指導者としての私のいたらなさと納得しましたが、大学院生にはいい迷惑でしょう。『世のなか正直』のためには指導者も日々精進が必要です。


生体防御と免疫制御 (平成14年9月1日)
 遺伝子ノックアウトマウスの作成技術の確立は今までの研究結果からは予想にもされなかった免疫系に関与する新しい分子の発見や役割をもたらしました。例えば、免疫の中心的役割を担うαβ型T細胞を消したノックアウトマウスは感染症によって死ぬのではなく、自然発症してくる炎症性腸疾患で死ぬのです。免疫系いうのは外から侵入してきた異物や自己の老廃物の排除という生体防御機構としての役割だけでなく、その生体防御系を制御する役割があることがわかります。免疫制御機構の破綻である自己免疫病や食物アレルギー、花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患の急速な増加が社会問題となっています。免疫制御機構の解明によってこれら難治性疾患の予防法や治療法の確立が可能となります。したがって免疫制御機構が学問的にも社会的にも注目されるのは当然の風潮でしょう。  しかしながら、それは文明人間社会での問題です。未だに世界の60億の人間を死にいたらしめる最も大きな原因は感染症であり、エイズやエボラ出血熱、SARSといった新たな感染症が次々と出現しています。いったんは制圧されたかにみえた結核もふたたびひろがり始めています。また地球温暖化によるマラリアの発生地域が拡大しつつあります。私は本来、免疫系は病原微生物から宿主を防御する生体防御機構として存在しており、その進化の歴史は感染症の脅威によって作られてきたと考えています。生体防御は異物と戦う免疫であり、過剰な生体防御を制御するのが免疫制御です。続々と作られるノックマウスから提供される情報を整理し、生体防御学と免疫制御学いう学問の分子基盤を相互に関連づけて、再構築することが必要でしょう。